ミーハーでごめんなさい。読みましたよ、ピース又吉さんの『火花』単行本。
先日本屋にいったら、入口の目立つ場所に平積みされていて、これがいろいろメディアで噂のアレですな、という事で、衝動買いして早速読みました。
又吉さんというと、大阪出身のお笑い芸人らしからず、ぐいぐい前に出てくるタイプではないけどボソっとおもしろい事を言ったり、IPPONグランプリでの大喜利の回答から感じられるセンスは凄いと思っていたし、彼自体が大変な読書家というのは知っていたので、彼の書いたオリジナル小説という事でなんだかんだで興味はあったわけです。
『火花』の感想
純文学小説は意外に難解じゃない
yossyは読書は割と好きですけど、フィクションである小説はほとんど読んでいなくて。
ましてや純文学小説になると、純文学の意味や定義すら分かっていないので、難解な言葉で難解な事が書かれていたら嫌だなぁとは、ちょっとだけ読む前に心配していたんですけど、その心配は全く不要でした。
純文学小説という聞きなれない言葉に変に警戒心を持ってましたが、全然めちゃくちゃに読みやすい文章でした。
総ページ数148ページ、だいたい6時間ぐらいで一気に読み切れましたね。読んでいて疲れないし、次のページを早く捲りたいという欲求になる感じで。
先にとりあえず言っておくと、yossy的には内容はとても面白かったです。
本のあらすじ
なるべくネタバレしない程度に本のあらすじを。
主人公の漫才コンビ「スパークス」の徳永(当時20才)が、ある花火大会のイベントで他事務所の漫才コンビ「あほんだら」の先輩の神谷(当時24才)に出会って、徳永と神谷は意気投合して師弟関係になり、お互いお笑い芸人として、漫才師として、日々奮闘していく日々が描かれています。
後半の神谷が32才の年齢描写があってから、その後2年(?)は経過しているので、全体で10年の歳月の時間かな。
フィクションなのにリアリティ
著者が実際のお笑い芸人である又吉さんが書いているだけあって、小説というフィクションの世界なのに、主人公の徳永の内面描写や売れない若手漫才師の日々の仕事や先輩の神谷との関係性などが妙に生々しくて、売れない若手芸人や漫才師の人ってこういう世界を生きているんだなぁと強く感じました。
特に神谷が長年居候していた彼女の真樹の家を出ていかなければならなくなった時の話は、とても切なくて。。
まだ若い芸人である彼氏の将来性に期待して自己犠牲を払って大きな包容力で見守ってくれた女性も、いつかはどこかで現実的な事に目を向けなければいけない時にどう折り合いをつけるかというところが。
多分バンドとかミュージシャンとかでも多分こんな感じなんでしょうね、きっと。
今テレビに出てくるお笑い芸人さんはほんの数%の成功者であって、その下には氷山の一角ではないけれども、無数の夢破れた芸人さんがいるんだろうなぁと改めて思いました。
先輩”神谷”と後輩”徳永”の違い
どこまでも天才肌の神谷と、生真面目な徳永の関係性について。徳永はずっと神谷の事を慕って師匠のように仰ぎ、日々生活を共にし遊びいろんな事を吸収していきますが、徳永は最終的には自分の進むべき道は神谷と違う事を自分で理解して、それを神谷に言う場面があるんですけども。
神谷はお笑いを自分自身で創造と破壊を繰り返し、かつそのセンスが凄いけれども、ただ面白い事をやればよいというスタンスなので、お客さんにどう伝えたいという視点はゼロみたいな。
徳永はゼロからの革新的な斬新的なお笑いはできないかもだけれど、自分の笑いをお客さんにどう伝えるかの工夫や努力をできるみたいな(後々に)。
だから自分がふと思ったのは、芸術家とデザイナーの違いになんか似ているなぁと。
クライアントなしに、自分の創りたいもの・今良いと思っているものを描くのが芸術家で、彼らは他人の視点は気にしない。
一方、デザイナーの場合はクライアントありきで、クライアントの希望や意図をふまえた上で、自分のセンスや技術を活かして、描く。
結局、その根本の部分が、神谷と徳永では違っていたわけで。
でも、それでも徳永はそんな破滅型の天才・神谷のことを最後まで慕い続けていくわけですけども。
こんな先輩がもし身近にいたら面倒くさいけど、でも確かに憎めない人間味があるとは思う。
後半いろいろあったけど、最後もなんとなくハッピーエンド(?)の関係性で読み終われて個人的には本当に良かったかな。
文章力のセンスと静的な視点
なんでしょうね、又吉さん自身が凄い読書家かつ鋭い洞察力があるからでしょうけど、描写とかに使う文章力のセンスが高いなぁと。
別に小難しい言葉を使っている訳じゃないのに、ハッとなる描写の仕方をするというか。回りくどくないし。
あと、静的というか冷静な視点が常に存在する感じ。又吉さん自身の芸人での仕事のスタンスも現れているのかもしれないですね。
主人公の徳永の喜怒哀楽のシーンでも、自分の事なのに冷静沈着な第3者が描いているような内面描写で描かれていて。
又吉さんの文章だから読みやすいだけなのかもしれないけど、こういうのが純文学小説というなら、もうちょっと自分の読書ジャンルに加えて読んでいっても良いかなと思いました。
まとめ
いやいや、あれだけメディアで絶賛されると期待値上がり過ぎて、ハードル上がり過ぎて、読んでそこまでは・・・ってなるパターンが多いですけど、この『火花』又吉 直樹 (著)は面白ったですよ。こうなると2作目も勝手に期待してしまいますね。又吉さんには、是非2作目の小説も書いて欲しいな(^_^.)