今日は日本で恐らく一番有名なアートディレクター・クリエイティブディレクターであろう佐藤可士和さんの新書「佐藤可士和の打ち合わせ」を読んだので、その感想を書きたいと思います。
佐藤可士和さんについて
佐藤可士和さんを知ったのは確か、NHKのTV番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」が最初だったと思います。
なんだか若いお兄さんが大企業の社長や重役みたいな人達と打ち合わせしたり、プレゼンしたりしているのを見て、カッコいいなぁと思ったのが第一印象です。
もちろん実績も素晴らしくて、佐藤可士和さんが手掛けた広告物といえば、誰もが見た事あるロゴ・パッケージ・商品や聞いた事がある企業のものがたくさんです。
楽天、ユニクロ、セブン&アイ、ホンダN-BOX、TSUTAYAのTポイントカードなどのロゴや、DOCOMOの携帯デザイン、キリンの商品パッケージ、スマップのCDのジャケットなどなど。
そんな第一線の広告のプロである、佐藤可士和さんの打ち合わせ術を紹介してのがこの書籍です。
書評
佐藤可士和さんの仕事は誰かと「打ち合わせ」で埋め尽くされていて、彼にとって打ち合わせが「仕事そのもの」であるため、その打ち合わせの質を高めれば高めるほど、アウトプットの質も上がっていき、結果的に仕事の質も高まる、とのこと。
そして「毎日の食生活が健康を作るように、毎日の打ち合わせが仕事を変える。」と確信していて、どうすれば最高の打ち合わせができるかの考え方やノウハウが紹介されています。
自分自身の仕事の場合でも、お客さんとの打ち合わせによって方向性を決めて進めていくという点で、打ち合わせはとても重要だなぁと感じているので、この本に書かれている事はとても参考になる部分が多かったです。
その中でも、特にこれはと思った点に絞って紹介したいと思います。
どんどん口に出す事で「思考の輪郭」がはっきりしてくる
打ち合わせの時に、「間違った事を言ってしまってはマズイ」、「ピント外れな発言をして相手に侮られたくない」、「間違ったアイデアを言うのが怖い」、というのは自分自身に置き換えても多々ありますが、佐藤さん曰く、ともかく口に出して話すことが重要な意味を持つとのこと。
何かをしゃべって口に出す「言語化」という作業は、思考を具体化する第一歩だと。
まだ脳の中に何かぼんやりある状態の「思考」を、口に出して、初めて具体化していく事ができるのだと。
つまり間違っていたとしても、「もしかしてこれかもしれない」と思った事を口にすることによって、抽象的な概念は具体化でき、この「思考を口に出す事」を繰り返すことによって、だんだんと思考の輪郭がはっきりしてくるそうです。
最初は間違った考えであったとしても、それを徐々にプラッシュアップすることで最終的により良いアイデア・方向性に持っていければいいんだと。
確かに言われてみると、本音で話せるお客さんや知り合いとの打ち合わせ・会話で、自分の考えをはっきりさせられるようた体験って結構あるような気がします。
それはつまるところ、佐藤さんが言うように、自分のなんとなくぼんやりした考えを相手に話す事(=口に出す事)で、思考の輪郭をはっきりさせて、具体的な考え・アイデアに変換できたということなのかもしれないなと。
逆に心の中で浮かんだ考えって言葉に出して誰かに言わないと、いつまで経ってもぼんやりしたままだったり、最悪の場合は忘れてしまったり、なんて事しょっちゅうあるような気がします。
どんな相手に対しても「間違いを恐れないで思考を口に出す事」、これは自分自身、これからの仕事の打ち合わせで意識して実践して取り組んでみたいと思います。
NOと言うなら、どんな立場であれ代案を
打ち合わせの出席者は、善意で行動しなければいけない。善意で行動することが、打合せの質を高め、いいアウトプットを生むのだから。
その前提に立った場合に、誰かの出したアイデアに対してNO(否定的な意見)をするのは構わないが、否定をするのであれば、代案を出せと。
確かに !!
自分の出した案にNOを言われる事って、実際の打ち合わせでも多々あります。
それはそれでいいんですが、NOばかり突きつけられて、「じゃあどうしたいんだ?」と、とてもイライラしたり。
つまり代案を相手が用意してくれない事に対するイライラだったのかと改めて認識しました。NOばかり突きつけてくる相手には今度はこう切り返そうと思っています。
「なるほど。それではこれに代わる別の案はございますか?」と。
もちろん、自分自身もNOを言う時は代案を必ず用意するように心掛けないといけません。NOと代案はセットという事ですね。
この話を読んで、とてもスッキリしました。
イメージとアイデアの違い
あまり意識した事がなかったのが、イメージとアイデアの違いについてです。
打ち合わせで「アイデア」という言葉はよく出てきます。
ただ、このアイデアという言葉は、佐藤さん曰く、かなり「重たい言葉」であると。
アイデアというと、完璧でかなり正解に近いような考え方を求められているような気になる人が多いから。
確かにアイデアというと、良いものでないといけないというプレッシャーさえ感じます。
そこで佐藤さんが提唱しているのは、アイデアという言葉を安易に使わないで、イメージという言葉でまずはやりとりしましょうと。
「イメージは持っているか」「イメージができているか」「イメージはどんな感じか」「イメージ的にはどんな方向性か」など。
正しい正しくないはおいておいて、打ち合わせに入っていきやすいし、自分の想いも伝えやすいだと。
準備するにしても、アイデアを考えるのは大変でも、イメージならそうでもないので、準備のハードルも低いわけで。
そして初期の打ち合わせ段階では、イメージしてきたことを出しあう場にしていく。
そうすることで、いろんなことが言いあえるようになり、みんなのイメージを次第にひとつの方向性に収束していく。
そしてそれらのイメージからアイデアを作り上げていけると。
だからイメージはアイデアの一歩手前にあるものだよ、と。
これも実際の仕事の打ち合わせで実践する価値のあるテーマだなと感じました。
お客さん自身がなんとなくのイメージはあるけども、具体的なアイデアに落とし込めていないという場合はとても多いので、最初はそのイメージを聞き出すことに注力して、それらのイメージからアイデアに昇華させるという手順は非常に理に適っているなと思いました。
例えば「ポップな感じで」「10代の女の子をターゲットで」というようなイメージからの、「10代に好感度の高いXXXさんをイメージキャラクターに使いましょう」だったり、
「エコな感じ」というイメージからの、「緑色の葉っぱをモチーフにしたデザイン」でいきましょうというような、イメージからアイデアへと昇華させていく。
これに関しては先で挙げた「口に出す事で思考の輪郭をはっきりさせる」という部分と、相通じるものがあるような気もします。
いずれにせよ、相手からイメージを引き出すヒアリングのスキルも求められるな、と強く思いました。
その他
その他にも打ち合わせでとても役に立つ考え方や実践術が多数書かれていますが、ここでは割愛させて頂きます。
詳しくは書籍で実際にご確認頂ければと思います。
まとめ
この本は仕事でお客さんとの打ち合わせが多い、もしくは社内の打ち合わせが多いというビジネスマンの方におすすめの良書です。
読めばすぐに実践できるような事が多いので、日頃の仕事の打ち合わせで意識して実践継続する事で、打ち合わせの質、ひいては仕事の質を上げる事が出来るようになると思います。
自分自身も早速実践していきたいと思っています。